植物の生存戦略

「じっとしているという知恵」に学ぶ、という副題がついている。
実はこの本を買って読み始めてしまったと思った。
植物学をわかりやすく解説した本かなと勝手に想像していた。
一般向けにやさしく書いてあるとはいえ、現在も研究が進行中の最先端の植物学だったのだ。
全10章、各章それぞれの専門の人が手分けして書いている。

遺伝子がどこでどんな物質と関わりと変異が起きるのか。
花粉か雌しべに付くと花粉管が胚嚢に向かって向かって行く。
それはなぜどんな仕組みで間違えずに胚嚢に到達できるのか。
花を咲かせる植物ホルモン、フロリゲンを見つけた。
一本の茎にひとつだけ花をつける植物の先端を切り取ると、葉の脇から花茎が出て花を咲かす。
本来咲かないはずの場所からなぜ花を咲かせることが出来るのか?
樹木はなぜあれほど巨大な体を支えることが出来るのか。
マメ科植物と根粒菌の関係。
多くの植物と菌根菌の関係など。

上のように書くと面白そうに見えるが
DNA、mRNA、酵素や植物ホルモンなどの名前がたくさん出てくる。
これらの物質と植物の振舞いの関係がとても複雑で、ほとんどついていけなかった。
でも実際、この部分が本題だったりするのだ。
それでも時々、お、そうかと思ったりするところがあったりして苦労しながらも何とか読み終えた。

私がそうかと思ったところはまあ単純で幼稚なところばかり。
たとえば植物の基本器官は茎、葉、根の三つだそうだ。
花は?誰もがそう思うだろう。
花は葉が変化したものなのだそうだ。
生殖をつかさどる大事な器官が葉っぱだったとは。

また植物の基礎的な研究にはモデル植物というものが使われている。
双子葉植物ではシロイヌナズナ、単子葉植物ではイネだ。
世界中同じ植物で研究しているんだそうだ。
それはなぜかというと、
シロイヌナズナはまず育てやすいこと、次に自家和合性があることだそうだ。
自家和合性とは同じ遺伝子を持つもの同士で交配ができるということだ。
そして何よりゲノムが小さい。(DNAのサイズが小さい)
イネはそれに加えて食料としての有益性がある。
そして何よりもお互いの研究データを共有できる。

植物の先端部分、これを頂芽というがこれを切り取ると脇から新たな頂芽が現われる。
これを頂芽優勢という。
これ関わる植物ホルモンが「オーキシン」と「サイトカニン」だそうだ。
オーキシンは種無しブドウを作るときに使われるジベレリンとよく似た性質の植物ホルモンだ。
トマトの花にかけると受粉しなくても実が付く。
本来オーキシンは細胞分裂を促進させ植物を成長させる働きをする。
どんな植物もオーキシンなしでは生きてゆかない。

これら植物ホルモンは一定の決まった役割があるわけではなく、働く場所や出会うほかの物質との関係でまったく違った振舞いをする。
人工的に作られたオーキシンは除草剤としても使われる。
ベトナム戦争のときに枯葉剤としてまかれたものも人工オーキシンだそうだ。
そしてベトナムでは多くの奇形児が生まれた。
ひとつの真理の追究や発見が応用の段階になると想像しない方向へと進む。
理論物理の研究から核爆弾が生まれたことと似ている。

この本、分からないなりにもこれを書いた研究者たちの熱い思いが十分に伝わってくる。
それが何より好感の持てたところだ。

植物の生存戦略
「植物の軸と情報」特定領域研究班編  朝日選書  朝日新聞社

1004夕日01
今日の赤いピンポン球のような夕日。
このようにまん丸に見えるのは珍しい。

EOS 5D Mark II
EF70-300mm F4-5.6 IS USM
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