柿の思い出

昨日に続いて柿の話。

この時期、柿を見て思い出すことがある。
私がまだ小学校に上がる前、恐らく5歳頃だと思う。
当時は食べるものままならなかった時代で、私はいつも腹をすかしていた。
母につれられて買い物に出かけると果物屋の店頭に柿が並んでいた。
「柿が食べたい」というと、母は私の声が聞こえないふりをした。
もう一声「柿が食べたい」というと無視をして歩いていってしまった。

はっきりは覚えていないが次の日だったか、母が外出して私が留守番状態になった。
茶箪笥の上を見ると母の財布が置いてある。
私は椅子を持ち出してそこに上がり財布から百円札を二枚抜き取った。
私としては初めての悪行だった。
周囲を見回しながらドキドキの行為だった。

その足で先日の果物屋へ行き、百円札二枚を差し出して「柿をください」といった。
店の人は怪訝な顔をして「お母さんに頼まれたの?]と聞く。
私はコクンとうなづく。
新聞紙で作った大きな袋に柿は入れられた。
まずひとつ目の袋にびっしりと、そしてふたつ目。
心の中でしまったと思ったがもうどうしようもない。
平静を装いながらそのふたつの袋を受け取った。
その時はかろうじて両手に抱えたが歩く途中何個も柿はこぼれ落ちた。
このまま帰るわけには行かない。
家に向かう途中の学校の縁の下にその袋を隠し、柿を1個食べた。
もはや、味は分からなかった。

私は柿をそのまま置いて家に帰った。
玄関先で母が鬼の形相で待っていた。
不審に思った店の人が母に知らせたのだ。
普段は優しい母だったがこのときは違っていた。
私の頬をつねったまま、もううちの子ではないと外へ引っ張り出そうとした。
私がどうなったか、これ以上は書くまでもないだろう。

私が40歳を越えた頃だったろうか、あるとき母にこのときの話をしてみた。
しかし、母は「へぇ~そんなことがあったの?」
私に鮮烈な記憶を残したこの出来事を母は覚えていなかったのだ。
その母も一昨年に亡くなった。
店頭に柿が出回り始めると、今も私はこの出来事を思い出す。
柿は酸っぱくはないが、私の記憶の中の柿は今も甘酸っぱく蘇るのだ。

1010ロサ・ダビデ01
ロサ・ダビデの実

EOS 5D Mark II
EF24-105mm F4L IS USM
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