雪明りの路 つづき

伊藤整は1935頃から1960年代くらいまでに活躍した小説家であり評論家だった。
私としては論理的で手厳しい評論家のイメージが強い。
翻訳家としても知られたが、主にD・H・ロレンスのものが多かったようだ。
その中で『チャタレイ夫人の恋人』の翻訳をめぐって、文学作品か猥褻文書かで争われた「チャタレー裁判」で一躍有名になった。

彼が北海道生まれで小樽で育ったことを知ったのは、現在の男声合唱を始めてからだった。
多田武彦の男声合唱曲の中に伊藤整の詩のものがあったからだ。
詩には小樽付近の情景が多数出てきたのだ。
それから伊藤整の詩を読むことになった。
伊藤整は詩集を1冊だけ出している。
それが「雪明りの路」だ。
そのすべては彼が15~19歳までの少年期、小樽時代に書かれたものだ。

この詩集を初めて読んだとき、本当にあの評論家の伊藤整と同じ人物なのか?と思うくらいのギャップを感じたものだ。
詩のほとんどは身の回りの生活の中から生まれている。
通学で歩いた情景や彼の近くにいた人たちへの思い。
また、女性への思慕の情など少年らしい心の襞を覗かせたりもする。
理知的だったと思えば、やけに叙情的になったり。
それが日常的な言葉で書かれているので素直に受け止めることができる。

多田武彦作曲、伊藤整詩による男声合唱組曲は二つある。
ひとつは「雪明りの路」そうしてもうひとつは小樽商大グリークラブ委嘱による「吹雪の街を」である。
詩はいずれも詩集「雪明りの路」からである。
その中で「吹雪の街を」は女性への思慕を書いた詩を集めたものだ。
よく読むとその内容はプラトニックなものだが、それがなかなかおもしろい。

「吹雪の街を」からの一編

 「夏になれば」

 夏になれば みな浴衣で涼み
 川すぢの祭りには 華やかな灯がつく
 あそこの家にゐて
 何か寂しいときも 夜ねいる蒲団の襟にも
 お使いにあの坂路を下るときも
 あなた自らさへきづかずにつくる
 あの笑顔の幸福さをなくさないように。
 いつも鳩のように胸ふくらませて、
 たまさか街で逢えば
 何となく笑ましげに挨拶する、あの素直な美しさを
 生涯失わないように。
 私はそれのみのために、
 嫁ぐ日になっても
 母となってまでもの
 あなたを 心から祝福しよう。
 街ではありがちな事だが
 この世を私もしんじるために
 あなたの笑顔にだけは不幸がうつらないように。

好きなのにはっきり言うこともなく、ええかっこしいの詩である。
裏もなければオチもない。
他にも、なぜ女の方から私に告白しないのか、というようなエラソーな詩もある。
しかし、全編読んでいくうちに、なんともいとおしくなってくるから不思議なものだ。
終曲はどうみても告白しに行って振られた後の詩だと思わせる。
少年とはいえ伊藤整にして負け惜しみのような言葉が出てくるのがほほえましい。
多田武彦のすばらしさは詩の本質をよく見抜いているところだろう。
この曲は7割くらいがソロで、えらく苦労したことを覚えている。
心情的にはよくわかるので好きな曲ではある。

1012鷹栖06

小樽ではこの伊藤整にちなんでか「小樽 雪あかりの路」というイベントを行っている。

NEX-3
E18-55mm F3.5-5.6
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コメント

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こんにちは。
私も学生時代 合唱をやっていました。
「海鳥の詩」の「エトピリカ」を歌って どんな鳥なんだろうと
北海道にまでエトピリカを見に行ったことがあります(笑)
あのころは フットワークが軽かったんですねぇ。
(遠くを飛ぶ 小さなピリカを見ました^^。 うれしかったです!)
確か potatoさんも この組曲を合同合唱で歌われたと 記事を見た
記憶があるのですが・・・。

そういえば・・・と思って 探してみたらありました〜。
「雪明りの路」が入ったCD♪
えらく苦労したということは・・・もしかして ソロをされたのですか?!!

せっかく引っ張り出してきたので 今日は ドリカムでなく これを聞きながら 大掃除に励むことにします。

また 合唱のお話も聞かせてくださいね。
わたしも また いつか合唱できたらいいなぁって思います〜。
父も母も姉もちなみに姉のダンナも合唱やってる 合唱一家なんです^^

ごまきゅ さん
ご家族で合唱されているなんてすばらしいですね。
皆さん集まったら歌ったりされるのでしょうか。

「海鳥の詩」はGLEE FESTAの合同合唱でやったことがあります。
http://potato50.blog93.fc2.com/blog-entry-175.html
このときよりだいぶ前ですが、小樽でGLEE FESTAをやった時、わが団単独ステージが「雪明りの路」で、合同合唱が「吹雪の街を」という時がありました。
そのとき「夏になれば」のソロをしました。
それ以降も何度かこの曲のソロをやりましたがなかなかうまくいかないものです。
今年のGLEE FESTAは旭川が担当です。

これからもちょくちょく合唱ネタは出てくると思います。
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